山田喜代春さんの版画展を、偶然 見た。

紙の殆どを”寺院の瓦屋根”で占めた絵が、素敵だった。可愛いい
絵柄は 性に合わないけれど、墨色が滴るように見える。清々しく
映ったのだ。思わず、2回で完結の「版画教室」に申し込む。

百合の花を、A4サイズいっぱいにスケッチして行ったが、山田先生
は「初心者は 葉書サイズでも大変です」とおっしゃる。見回すと、
年賀状のイラストの人が多い。すぐに諦めて、絵を縮小コピーした。

まず、白い紙に写す。それを薄美濃紙に写して、墨汁で描く。版木に
糊を手で付け、手の平で擦ると美濃紙がポロポロと剥がれる。墨色の
線が残る。ここまでの課程は、浮世絵の時代と同じ作業だそうだ。

あれこれ下準備に時間を費やす。彫るまでが結構大変だ。しかも、
下絵を写しているうちに、線が細いほど 彫るのが難しいことに
気付いて嫌気がさした。けれど、今更 悩んでいる時間は無い。

それから毎日、お昼休みに彫る。「危なっかしい手つきは、見て居
れない」「もっと道具に凝れ」「砥石も要る」だの、ギャラリーの
うるさい事には閉口だった。知識は無くても、情熱があるもんね。

いよいよ刷る日。彫るより刷る方が難しいと、先生はおっしゃる。
だが、同じ版でも色を濃くしたり暈かしたり 多様に変化するのは
面白いし、醍醐味ではないか。私は、仕上げることで精一杯だけど。

出来上がり!花弁の重要な線が切れているのは、刀が滑ったから。
絵の周りに 墨色が点々と写るのは、彫り足りなかったせいだ。
線の付け足しは出来るが、彫り残しを削って、更に刷り直すだろうか。

私の情熱は、長く続かないのが特徴である。

2003.1008