「色には表情がある。色は生きものである」とは基本にある言葉だ。

色彩学の最初の授業で「韓国・朝鮮の人たちは、世界中のどの人種
よりも白を識別する眼を持つ。」と習った。
後に”白磁に景色を視る”のは当然のことだろうと腑に落ちた。

午後、車で20分の日野町『織田廣喜ミュージアム』に出掛ける。

安藤忠雄は、明るいうちに絵を描いて日が暮れたら寝る生活だった
彼にふさわしい、自然光だけで採光する美術館を造った。
「閉館は日没」の小さな建物。

モンパルナス研究所での裸体の女性とセーヌ河の絵が印象に残る。
織田廣喜の言葉も掲げてあった。

 …赤には活力があり希望を感じさせる。

  とろけるような優しさと可愛らしさ。見れば見るほど
  何とも言えない表情の女性っているもんなんですよ。…

『赤い帽子の少女』は、はにかんで眼を伏せていた。
陽が少し傾くと、憂いを含んだ淋しげな顔に見えてくる。
このまま日没までいたら泣き出すんじゃないかと思うくらい。

 …女性の表情の中に寂しさを出すことにこだわり続けて
  います。”幸せな寂しさ”を出したいのです。…

花の匂いの充満した空気を閉じこめたまま陽が翳っていくと、山や
池の水面までも珊瑚色に包まれていく、この時刻に私はヨワイ。
それは幸せな寂しさのせいだったのかと思う。

色がこんなにも表情を変えるのなら”白磁は見飽きることはない”
のも頷ける話だ。ここにも、時を隔て季節も違えてまた来よう。

2004.0418