約10年前の春、常務の退職にあたりロッカーの整理を手伝った時、
片隅に転がっていたひとつの碗。「これ、いいカタチ!」と、取り
上げて私は言った。両掌に収まる大きさと焼き物の心地よい重み。

常務は「前任の窯業試験場長だった平野敏三氏から、油焼に成功し
た証の碗を、引き継ぐ時にいただいたのだ」と言いつつ私にくれた。

”試験場の研究熱心な先生にしては、雰囲気のあるものを作られる
なぁ”と思ったのが、失礼ながら当時の偽らざる感想であった。

今月、眼にした『寒六窯と遊陶人』のパンフレット。私は初めて、
平野敏三氏が陶芸家としてこんなに有名であったことを知った。
小倉遊亀が花瓶を描いていたなんて。是非とも見に行かなければ。


だが今日は、アサコの大学で茂山狂言を観る日だ。「TOPPA!」
など、ここ数年の茂山一族の若手の活躍には目を見張るものがある。
『蚊相撲』は、観ている小学生たちの反応が早く笑いが起こる。

アサコの伊勢物語のレポートを読む。田舎は愛するが田舎者は無粋
疎まれる、町や数奇は粋を好むって世界共通・普遍的なことだね。

全国の高校生の短歌をまとめた「SEITO百人一首」も読む。
和歌史1300年・近代短歌100年の歴史の中、イマドキの高校生が2回
の募集で、英語短歌500首弱を含む計約2万首の応募とは凄い事だ。

厳選の200首を読んだ中、特に印象的な2首。
”「か」で「顔はまあまあだけど」という文が出る携帯の予測変換”
”立ち読みの我の前にて君が言う別れ聞こえぬローソンの窓”

こうした、時代や世代を超えて今を脈々と流れているものに接して、
とても感動した一日だった。そういえば乾山展も15日までだ。私も
作り手の端くれとして、古人の求めたる所を求めたいと思う。

2004.1208