お茶の先輩であるTさんから”高台寺の夜咄”に誘われた。夕刻ま
での時間潰しに、大丸で「小津安二郎の世界展」を見る。

名前は分からないが「煙の出る煙突と一緒にCMに出ていた人だ。」
「この人も見たことある」「私も!誰だったかな」と映画のパネル
を前に話してると、見かねた男性が「田中絹代です」と答えられた。

いつの日か、小津映画のようなシンプルな居間で暮らそうと思う。

ヒールの靴と違って草履だといくらでも歩ける私たちだ。風にそよ
ぐ柳が眩しく見えるのは、強くなってきた日差しのせいだろう。
 
縄手通りを通りかかり、骨董やの店先に白い”プラート”を発見す
る。「南欧をイメージしていたけど、この街並みにも合うわ!」


夜八時、蝋燭の灯りの元、椿を模った主菓子とお薄をいただく。

ライトアップされた高台寺の庭園は深閑として、ねねと秀吉の眠る
霊屋と山の木々が、まるで鏡のようにそっくり臥龍池に映っている。
一回りすると肩の芯まで冷えた。早く宿のお風呂に浸かりたい。

だがTさんは「寒いから一杯飲んで帰ろう。横文字じゃない店で」
と所望された。私は超辛口”春鹿”でお付き合いする。”久保田”
を口にした彼女は、「五臓六腑に染みこむねぇ」とおっしゃった。

宿は、永年の専業主婦からいきなり旅館の女将を継いだ友達の処だ。
すっかり渋い色の着物姿が似合う女将さんに変身していた。
Tさんが韓国ドラマ”美しき日々”を見る横で、小津安二郎の本を
開く。記載の『神谷バー』『鳥新』などは、私も行ったことがある。
特に『伊藤組紐店』は、MINIのツーリング仲間のオジサマの店だ。

遠い過去の人に、何らかの親しみを覚えながら眠りについた。

2005.0308