バラの花を見ると、未だに幼い頃食べた薔薇のジャムを思い出す。
不味くて段々と気持ち悪くなったにも関わらず無理して口に運んだ
のは、綺麗な瓶から想像する”美しい女性”への憧憬だった。

小山幸容さんは、そういう無理をせずして大人になったお姫様のよ
うな人である。微笑みながら話し出すと大輪の花が開く感がする。

彼女の初めての本「一花万象 Floral Healing」出版記念パーティ
のため京都ロイヤルホテルへ向かう。昼間より幾分か湿度が低くな
った夕刻、御池通りの柊や辺りはクチナシの甘い香りが漂っている。

天竜寺塔頭南芳院ヘンリー・ミトワ住職の挨拶で始まった。日本在
住40年。一休と花伝書の話は大概の日本人より日本人的と感じる。

大学教授・能関係・染織関係・茶道関係・華道関係・書家・画家な
ど京都らしい方々と、生徒の綺麗なお嬢さんたちで目映いばかりだ。

和服に片耳だけのピアスの男性や、白い髭に帽子とサングラスとい
ったいでたちの男性などからは遠ざかり、女性の親子とご一緒する。

その方は「花を習うより、小山さんに会いに行ってるみたいなもの。
話していると心が癒されて前向きに頑張ろうって思うの。」とおっ
しゃった。その言葉を、花で表現したのがこの本である。  

華やかな彼女だけに苦労無くと見る人もいるけれど、何の波風も無
い人がいるだろうか。ハードルを乗り越え事を成し得るからこそ、
より鮮やかな色になりより芳しい香りを放つのではないかしら。

帰り際に、一人一人和紙でラッピングされた花をいただく。私のは
深紅の薔薇だった。花を見ると心がふわっと和んだり元気づけられ
るように、私もそういう一輪でありたいと思う。

2005.0618