結婚当初、専務は清水焼の食器を大きな段ボール箱にいっぱい持っ
て来た。家業が信楽焼を扱うせいか、毎日の食事の陶器は薄いのが
良いと言うのだ。

これに加えて2人の趣味で集めた器の数々が、私の素材に頼った覚
束ない料理を実際より美味しくみせたと思う。 


日本陶業連盟が全国陶磁器企業(従業員5名以上)を対象に行った
調査によると、昨年の国産出荷額は前年に比べ2.9%減少、和飲食
器は7.9%減少ということだ。

食器の数の少ない家が増えているのだろうか。食生活の好みも欧米
化多国籍化になったので、和飲食器はさらに減少の一途をたどるだ
ろう。またその家庭に育つ子供も、将来食器を揃える可能性は低い。


どこでも見かける「せともの」の画一的な食器に見飽きた、かと言
って「作家もの」は値が張る。妙味があって食卓を愉しませるもの
をプラスガーデンから、と”游(ゆう)”の飲食器を作った。

減少傾向にある食器を作ること自体、マーケティング論から見れば
外れているかもしれないが、趣味ある人がゼロになることも無い。


今朝の事故で通勤の道路は大渋滞だった。熊笹の雪が、照りだした
太陽に溶けて、しだいに葉の色が透き通っていく様子を見た。最初
に豆腐を雪に見立てた人は、こんな風景をスケッチしたのだ。

たまには量でなく、家族がハッとする一品を作ってみようと思った。

2007.0320