Googleで、今夜、三重県の手力神社で花火が上がることを確かめる。

何年も前から、山伝いに花火の音を耳にしたことがあった。”どこ
で花火を・・・?”と不思議に思っていたのだ。

今年は一度も花火を見ていない。早めの夕飯を終えてダウンを着る。


遠くに上がる花火を目指して辿り着いた処は、ひっそりした山の中
だった。辺りは硫黄の匂いがして煙が森に流れている。明るい月が
空高くある。

音と共に頭上に花火がひらく中を、山と山の間の通行止めになった
幹線道路を歩く。ドンという音は、澄んだ大気のせいか夏より大き
く感じる。パラパラと花火の残骸が落ちてくる。

峠の頂に立つと、前方にぽっかりと田んぼと集落が開け、神社への
道に添って堤燈が並んでいた。打ち上げ場所は道路の真ん中だった。


神社に近づくと、半纏を着た人たちが放送するテントが見えた。

「198番 4号 ワレ ○○町 **商店さま
 199番 5号 チャ ○○町 ####さま
 社務所より御礼申し上げます。」

こうして奉納の花火を順番に読み上げ、それから打ち上げるのだ。

8号までの二百数十発の花火が、ゆっくりと時間をかけて・・・。夜
が更けるに随い、月の輝きが増していた。

終いまで見終わると、たいやきの屋台の行列に加わった。並んでい
るうちに人の波は退き、元来た道を戻る頃には私たち親子3人だけ
になっていた。静けさを取り戻した森を月が照らしている。


車に乗り、知った滋賀の道にさしかかると、さっきまでの情景が、
夢か幻のように思えた。

2010.1017