1972年創立の弊社は、翌年に建物、トンネルキルン、炉上乾燥装置、
成形設備を竣工し、植木鉢を中心とする信楽焼製品の操業を始めた。

以来約30年間にわたり活躍した、24時間焼成の全長80mのトンネル
キルン窯(レンガ数約27万丁)を、本日より取壊すことになった。

見納めに窯の中を歩く。ライトアップした窯は、壊すのがもったい
ほどしっかりしている。窯の火を止めたのは2006年11月のことだっ
た。今日初めて窯の存在を知る社員がいて、時代の流れを感じる。

新米、水、塩、清酒、榊をお供えする。榊立ては、もちろん我が社
で焼いた花瓶だ。

午前11時、新宮神社の宮司さんにお祓いをしていただく。
社員一同、それぞれの思いを胸に、お別れの儀式に立ち会った。

今は家業の料理屋を継いだ若杉さんも、夜勤で寝坊してよくトンネ
ル窯内の台車を脱線させたせいか、感慨深く思っているらしい。

午後1時には解体業者が来て、配管装置をはずす作業が始まった。

窯のあった場所には、屋外に積んである植木鉢を運び込む。外に出
すほどの在庫を作ってはいけない。


就業後は、梅田へ向かった。ビルボード大阪でファラオ・サンダー
スを聴くのだ。新しくなった大阪駅は初めてで戸惑う。大学生の次
男も大阪は不案内なので、落ち合うのに少々時間を費やした。

71歳のファラオはよたよたと歩きながらステージに上がったが、演
奏しだすと力強く、合間に話す声はまだまだ若々しい。

最後の演奏の終わりがとても印象的だった。まるでアフリカの大地
に陽が沈むような、遠く彼方へ去っていくような感覚がした。

2011.1026