先月の東京出張で一番印象に残ったのが、某家具会社ショールーム
で見た『地産地消』プロジェクトだった。

小学校の机や椅子・ロッカーなどを、その学校近くの山林の木を使
って作るというものだ。

山の活性化が課題だろうけれど、丁寧な作りによる肌触りの良いも
のに囲まれると、誰も落書きなんかしないだろうと思った。商品の
値段は少々高くても、それを補って余りある教育ではないかしら。


私の通った小学校は、学校が山林を保有していて、毎年卒業生が植
樹をした。明治時代から今も続けられている。木材を売った利益は
学校の設備や楽器に還元されていた。

10〜15年前は外国産の木材の需要が主流になり、国内産はあまり使
われない傾向にあったらしい。今、再び国内の木を活用する動きが
出ているのは喜ばしいことだと思う。


また、杉だけで製作された椅子を見て、二村さんは「杉は曲がる特
性を持っていますから、難しいですよね」と言った。これを聞いて
思い出したのは幸田文著の『木』だ。杉に限った話ではない。

短編エッセイの中で、”並ぶ老木の二本の檜”の話が印象に残って
いる。真っ直ぐ育ったエリートの木と、傾いだまま育ったもう1本
の木に、ここまで経た樹齢300年のストーリーを想像する筆者。

木材になっても特徴は明確に表れ、一方は上材になる木、一方は使
いものにならない劣級の木に、人間を重ね合わせる視点だった。


艶の有無、肌理の荒さ細かさ、香りの有無。年輪。育った環境を想
像する。こんなに情緒豊かな材料は、他にない。

2012.0513