一昨年の春まだ浅い頃、信楽町内の会合で、朝宮茶の若き後継者と
同席したことがあった。

その中のひとりの男性が、会議の時間帯に不服があると申し出た。
「次回の会議も午後3時からなら、オレは来ない。こんな貴重な時
間は、何より大事な茶畑で作業したい」というものだった。

何故か、このSさんと会合後にTwitterでフォローし合い、少しのメ
ールを交わしたが、それきりになった。一度は彼のお茶を飲んでみ
たいと思ったが、市販していないと言うものだから…。


先日、不意に思い出し、「今からお茶を買いに行く」とダイレクト
メールを入れた。すると煎茶と焙じ茶を持って行くから、味をみて
口に合うようなら、それから購入してくれればよいとおっしゃった。

日本茶で失敗もないだろう。

20年前、会社で朝のお茶を飲んで吐き気がした。空腹だと症状は顕
著だった。それは茶葉に残る農薬せいと知って以来、注意して選ん
できたつもりだ。また、玉露には添加物を入れるという噂もある。

が、聞くまでもない。Sさんのお茶に、間違いなどあるはずがない。


焙じ茶は最高の状態では無いと、何度も申し訳なさそうにおっしゃ
った。それでも、芳ばしい香りがする。やわらかな口当たりなのに、
濃い。二度め、三度めとお湯を入れても、それなりに味わいがある。

東京では焙じ茶を飲む慣習がないので、関西に比べ薄く作るらしい。


煎茶は、少し温度を落としてゆっくり間をおいて淹れた。優しい味
でコクがある。急須の蓋を開けると、茶葉は綺麗な翠色に大きくひ
らき、良い香りがした。茶葉まで食べたいほど、美しく感じる。

2013.0218