先生のお家の庭には様々な椿が植わっている。今日はその中から赤
い唐子椿がお床に活けてあった。竹の花入れに木瓜の白い花と共に。

まず、炉で炉端を羽根で清めてからお客様に炭を注いでいただく
「炭手前」の稽古をした。上手く炭がいこるようにするのは、暖炉
に薪をくべるのに似て、空気をほど良く通す位置に置くのが要点だ。

次に、風炉で「薄茶点前」をする。六月に先生の月釜が予定されて
いるので、これから毎月練習して本番に備えるのだ。

円錐形の中央から縁に向かって階段状になった陶器の水指が置いて
あった。釉薬はいぶし銀で迫力がある。水面が広く見え涼しげだ。

ローマのコロシアムに似てますねと言うと、先生は「そうでしょう。
オリンピック前だから、ちょうどいいわよね。山田浩之さんが作っ
てくれたのですよ」と嬉しそうにおっしゃった。蓋は製作中らしい。


茶杓を清めるため袱紗をさばいた時に、右手の袱紗の取り方が少し
オカシイと注意を受けた。基本の部分、慣れたところに落とし穴が
あった。こういう処こそ気を引き締めなければと思う。

稽古の合間に、月釜に出す茶入れと茶杓、茶碗はどれにしようかと
思案されている先生が、問わず語りに話される。何を出されるのか、
時候に合った取り合わせなど、私たちにとっても愉しみなことだ。

稽古のあと、先生は1000種類が載った図鑑を開いて、今日の椿を
指された。一重の花びらに、おしべが八重になった様子が唐子人形
の頭に似ているという唐子椿の仲間で、『赤腰蓑』という名だった。

「唐子の頭」「腰蓑」だなんて。思い浮かべることができる人は、
少なくなっていくんだろうな。

2020.0218