「苔生した庭に、隙間なく松葉を敷いたところをご覧になりません
か」という申し出に応えて、見に行く日が来た。

まず90Lのビニール袋200袋に松葉を拾い、そこから赤松の松葉だ
け取り分ける。撒くのは簡単で、この選別に時間が掛かるらしい。

そのような人力戦をしても、美に対するこだわりを追求できるのは
神慈秀明会だ。会員のKさんに連れられて、一般の人は入れない神
殿のある区域に入らせていただく。松葉を敷いた庭が続く。

流政之の圧倒的な大きさの石造が、数本立っているのが眼に入る。

ミホ・ミュージアムから3km離れた同じ山奥に、広大な土地を切
り開いた庭があり、大理石が敷き詰められた広大なエントランスを
歩いて、富士山を模した神殿に辿りつく。すべてスケールが大きい。


玄関で靴カバーを履き、厳かな扉を開けてもらって、しずしずと入
る。天井は地上20階くらいの吹き抜け、舞台中央に扉があり、ご神
体(書)は奥に鎮座する。座席で埋め尽くされた礼拝堂である。

祝詞を上げ、手かざしを受ける。観音様・ミョウシュ様とKさんは
呼ぶ。庭の一角には大黒様の庵がある。初代会長はキリスト教の学
校卒。宗教のオールスター大集結といった感じだ。

美術館は現代作家の作品が陳列してあり、監事の方に説明を受けた。

庭に、I.Mペイ氏がデザインしたカリヨン・ベルの塔がそびえ立つ。
世界で数えるほどしかいない奏者は、もちろん会員のなかにいらっ
しゃる。正午ちょうどに始まる自動演奏を聴きながら出口に向かう。

すれ違う、温和な表情の信者さんたちと挨拶しつつ、下界に降りた。

"美には力が宿る、且つ何ものにも支配されない"が、本日の感想。

2021.0208