上野リチを知ったのは、2013年の月刊『ミセス』紙上だった。

毎月、頁のあちこちに挿入される、絵・テキスタイル・七宝焼の小
箱・室内デザイン画・洋服デザイン画など、多岐にわたった。

この秋、京都国立近代美術館で『上野リチ:ウィーンからきたデザ
イン・ファンタジー』が開催された。

京都の友だちと11時に待ち合わせる。岡崎公園駐車場に着いたのが
10:40AM。遅刻しがちな私にすれば上々の出来だ。首尾よく友だち
から「美術館のなかで待ってます」のLINEが入る。すぐに行くよ。

横断歩道を渡り広いエントランスを歩き中に入ると、そこはリニュ
ーアルされた京セラ美術館だった。やはり、すんなりとはいかない。


題名の通りの世界だった。可愛くて上品でシック。100年以上むかし
の時代なのに、今でも充分需要があると思うものばかりだ。

ウィーン工房時代・伊三郎との結婚から京都時代・群馬県工芸所時
代、どこでも溢れる才能を発揮しての作品の数々は圧巻だった。


日生劇場旧レストラン「アクトレス」は、1995年に改装されるまで
約30年間、上野リチ監修の壁画が使われていた。最初の意図と違い、
バックの絵具が経年により金色に変色したのが面白い。

まばゆい金色に浮かぶ草花や鳥。豪華な屏風のような空間で食事が
出来たのは、なんて羨ましいことだろう。


昼食をとりながら近況報告。ゆるやかな時間、気の置けない友だち
といるとホッとする。

数年前なら二つ三つと他の用事も加えるところだが、今は一日一つ
と決めている。日の明るいうちに帰路につく。

2021.1128