サーモンピンク色の菊菱紋のきものを着て、新しい足袋を履く。
コロナ禍下なので、今年の初釜も簡素化にするとのお達しがあった。

冷めてはいけないと、まず届いた弁当をいただく。次に丸盆に乗っ
た籤を一人一つづつ取る。開けると、番号と役目が書いてあった。

茶室に入り、床と釜と棚を拝見してから、全員座ったところで挨拶
をする。先生は、籤の順に抹茶碗の入った箱を皆にくださった。

私は金縁に『扇面おしどり』の絵碗だった。それぞれの碗に先生が
薄茶を点ててくださる。茶杓を持つ手を、ほんの一拍の間をおいて
掬われたので、これからいただく茶は貴重だという印象を受けた。


蓋置の青竹は、陶芸家のヤマダさんが今朝自宅裏の竹林から切って
きたものだ。白く粉が吹いた部分は竹の油なので、食器用洗剤で洗
うとその部分が落ちて、青々しくなるのだと教えてくれた。

ヤマダさんは、西暦2000年のゼロをつぼつぼ紋でアレンジした記念
碗をもらった。つぼつぼ紋は初聞きとのことで見入っている。先生
は替紋の説明をされるが、「つぼ」は不確かな記憶とおっしゃった。

そこで控室に戻り、ネットで調べて読み上げた。「つぼ」は小さな
玩具の食器のことだった。なんて可愛い由来だろう。

花びら餅や虎の絵の干菓子をいただき、代わる代わる薄茶を点てる。

若い頃は綸子の光沢を派手と感じていたけれど、茶色・薄鼠色・薄
紫色の綸子は年配の女性を華やかにみせて、佳いものだなと思う。


帰り路「仕事の事など一切考えず、没頭して過ごした時間は贅沢だ
った」と言うと、春から大きなプロジェクトを抱え、しばらく稽古
を休むヤマダさんが「だから僕も今日は来たかったんだ」と応えた。

2022.0118