襾囲庵の早朝茶会は、一週間前の天気予報が雨なら中止にしようと
思っていた。その時点では晴れ。準備はぬかりなく進み、あっとい
う間に目前になり前日の天気予報は雨になっていたので、たじろぐ。

お客様のキャンセルはない。身内の愚痴も聞かない。茶会とは、天
候に関わらず、決行されて当然のお約束だったのだ。覚悟を決める。


午前六時過ぎに集合。七時半から、茶を点て順次いただく。

香合は、景徳鎮の骨董屋購入の石製『蝉』。同じく1200年前の景徳
鎮の茶碗。これらは稽古仲間兼陶芸家の山田浩之さんの私物だが、
カッパドキアへ旅立ったので、事前に貸しておいてくれたのだ。

「中国の骨董品は高値になっているので、今は持ち出せないそうだ。
雑器は別だが」という話をされる方がいた。誰も真贋には触れず。


二匹の蛍絵の茶杓。床は七草を入れた有馬籠掛軸は『雷』

万葉集の満誓の「世の中の何に喩えむ朝開き漕ぎ去りし船の跡なき
ごとし」をもとに、仙涯は「雷の露の命と思う間もなし」と詠った。

朝出て行った船の航跡が何も残っていないように、雷がもたらした
夕立も、まもなく上がった。世のはかなさは、そのようなものだと。

雨のなか参集し、ひと時を過ごす茶会もまた、一瞬の出来事になる。


『宗旦に勘当された宗拙が身を寄せている先へ、宗旦が来た。灰形
を見ただけで、"倅がお世話になり"と礼状に書いた』という逸話
を披露する。それほど灰形が深いのは流派を越えての共通点だ。

火事だと「まず灰を持ち出せ」は鉄則らしい。お客様である石州流
の先生は若い頃、350年ほど歴史ある灰をもらい受けたそうだ。

足して足して数百年の灰、老舗ウナギ屋のタレみたいだなと思う。

2024.0708