日本画家に、油絵を習ったことがある。
そこで、私は油絵に向かないと悟った。

何年か前、芸大大学院卒の若杉さんに習おうとしたこともある。
先生は、まず布を丸めてデッサンすることを奨めた。
布の皺を描いて何が面白い?   殊勝な志は、5秒で潰えた。
私は、見ていて飽きないモノを描きたいの。

お土産にとスペインの漉き紙、山梨県無宇谷のスケッチブック、
書家のお坊さんの和紙『おわび紙』、うっとりするような濃紅・
濃紫・薄紫色のエルメスの画用紙などを次々といただく。

値段を知らない事が幸いして、惜しげなく使う。
自分で買えば、もったいなくて使えないのもあるだろう。
もとより、そんな高価なものは買わないけれど。


下絵はせず 対象物を初めて描く時が、一番好きな時だ。
同じものを何度も描くと、線が狎れる気がして嫌になる。

反対に、他人のは”なんて伸び伸びとした熟れた線”と映る。
額絵のみならず、襖に描かれた草木や 帯に描かれた兎などを
見るにつけ、ただ憧れるばかりだ。

かといって、TVの日本画教室や、スケッチの極意などの本は
見ない。簡単に、上手に見える絵を描いてはいけないと思う私は
ヘンだろうか。

それでもいそいそと描き出すのは、編み物に似て、出来上がり
がどうあれ、”幸せな時間の手すさび”だからである。

2003.0628