友人に誘われて、大阪日本橋 国立文楽劇場へ行く。
義太夫節は、私のDNAが懐かしいと言った。

鑑賞教室があり、内容の全文と漫画での解説、ご丁寧にも
謡いのテロップが映し出される。解説イヤホンもある。

こんなものに気を取られたら、何も見えないと思う私だ。

「重の井子別れの段」で二人して泣く。と同時に気づく。
〜坂は照る照る 鈴鹿はくもる。
  土山間(つちやまあい)の間の、土山、雨が、降る〜のところ。


鈴鹿の脈を見て育った私に『あいの土山雨が降る』(鈴鹿
馬子歌)は馴染み深い。雨に煙る「藍」色か、山間いの「間」
か「哀」の、どの字かという記事だった。
涙と雨を掛けるように、「哀」を掛けていると思った。


夕食は、韓国料理を食べに行く。
彼女は、韓国のお酒”マッコリ”をビールで割ってくれた。
辛いものを食べると痩せるからと、それらを食べては飲む。

マッコリは「どぶろく」らしい。
大阪湾や淀川に架かる橋が色彩を失い、街のネオン灯が
雨より強く光り出した頃には、文楽はすっかり遠のいていた。

もう私の頭には「猫は腹割、犬は背割り」しか残ってない。
三味線の皮の剥ぎ方のことで、太棹には犬の背皮、細棹の
面にポツポツとある二つの印は、猫のオッパイということだ。

こういう話は、何より記憶に残って困る。

2003.0618