去年、炎天下のなか、妹は両親を連れて車で40分かかる鈴鹿の鰻専
門店 ”初音”に出掛けた。そして40分も待って食べた。今年も
行く。ここの鰻を食べなければ夏は越せないと思っているのだ。

先月末、二村さん一家は愛知博へ行った。午前9時に入場して一時
間後、お母さんが鼻血を出したそうだが、午後10時まで居たと言う。

伊藤さんは、暑さに弱ると点滴を受ける。信楽中央診療所でなく、
これまた40分かかる大津市の日赤病院まで行き、ほぼ一日を費やす。

皆、元気だ。私なんぞ日中、外に出ることを極端に避けるもの。

夏、学生の頃下宿先の京都の町やで毎日打ち水をし、郷里のトマト
と胡瓜しか喉を通らないと言っていた美穂ちゃんは、薄暗い土間で
タライに氷水を入れて涼をとった私の祖母と実によく似ていた。

日が照るに従い食が細くなるのだ。私もここ数年、気持ちがわかる。

鰻も白焼きを好むようになった。遠火で炙り、茗荷・青じそ・三つ
葉を散らす。鱧があれば湯引きにしてもらう。ジュンサイは喉ごし
が良い。皮も身も柔らかい”下田茄子”を湯に通し、生姜醤油での
和えものをつくる。

明日は”はじき葡萄”を作ってみよう。皮と種を取ったマスカット
と酢で絞った菊の花びら(黄色)を、大根おろしに混ぜてスダチを
かけるのだ。文政5年の料理本に載っているのは甲州葡萄らしい。
紫より翠色の方がより涼しげだと思うが、味に大差はあるだろうか。

こういうモノばかり食べていれば、今年の夏は痩せるかもしれない。

夜も更けて団扇型の麩煎餅を囓る。金魚は水の中だからなぁと、喉
の閊えを麦茶で飲み下す。躰に夜の冷気が流れ込んだ気がする。

2005.0728