昨日、『タイヤ館』に14インチのスノウタイヤを問い合わせると、
雪の多い地方から順番なので、入荷は来年になるとのことだった。
急な寒気団の襲来で、タイヤのはめ替えも予約で一杯らしい。
 
私は自分の車を運転するのが好きだ。通勤時間でさえ至福の時なの
に、羽根をもがれた気がする。滋賀県南部は比較的雪の少ない地域
だが、天気予報どおり今日は大雪になった。


20数年前のちょうど今頃、私は雪の降る夜の函館にいた。

初めて見る北海道の雪の結晶の大きさと量に驚いた。これなら、
すぐに積もるのも無理ないなと思った。

函館山からは、視界を遮る雪を除けば観光ポスターと同じ夜景が
拡がっていた。私は遠く日本海に見える漁り火よりも寂しかった。

街へ下りて『創園』という喫茶店に入った。薄暗い店内には誰も居
なかったような気がする。壁を覆い尽くす巨大なスピーカーから流
れる圧倒的な音量が、そこの空気だった。

曲の是非を考える間なく、呼吸するように耳に入るのだから仕方な
い。演奏者の息づかいまで聞こえるサックスとピアノの静かな曲に、
一層気分が滅入った。本当に哀しい時は涙も出ないのだと思った。


夜半、時折走る車のタイヤの音で、道路の凍てつき加減が分かる。

何年か振りにあの日落ち込んだ曲を聴いてみた。ARCHIE SHEPPと
DOLLAR BRAND のCD「DUET」に、昔の気持ちを思い起こす。

この永い歳月の間に、多くの人と巡り会った。子供にも恵まれたし
師となる人にも出会えた。お蔭で今の私がいる。あんなに落ち込む
こともなかったと思えるのも、若かった自分の弱さが見えるからだ。

2005.1218