「サルが恵子の枇杷の実を食べてるって!」と、母が知らせに来た。

何年か前、戯れに植えた枇杷の種がいつの間にか大きくなり、一枝
に実を付けた。今度の日曜日に収穫しようと楽しみにしていたのに。

あえて”恵子の”と母が強調したのは、親戚や近所の人が『庭に枇
杷の木はよくない』と忠告するのを、頑として受け付けず私が強硬
に守ってきたからだ。

しかし、先日のヴェトナムで一緒だった人たちまで「畑に移せ」と
言うものだから、これを機会と木を切る決意をした矢先の事だった。

見に行くと、サルの食べ残しの小さな何個かが付いているきりだ。

初めて成った実は炭酸のような酸味と瑞々しい甘さがあった。子供
にも食べさせたかったな。桃栗三年、枇杷は九年で成りかねるのに。


梅雨に入る前には、土に半分埋まったサンダルや靴が、あちらこち
らの民家の庭や畑で発見された。

何故?誰の?と薄気味悪く思い近所の人は話し合ったが、竹藪で大
量に発見された時点で動物の仕業と分かった。最初キツネやアライ
グマと噂されていたけれど、ハクビジンが最も有力な犯人だと思う。

公民館前に集められた靴は段ボール箱4箱を超えた。こんなに誰も
取りに来ないなんて、よほど存在感がない履き物ばかりってこと?


駆除のため、市役所ではロケット花火を無償提供しているという。

つれあいは長男に空気銃を探すように命じた。害獣を撃つつもりで
いるのだ。ボクたちもしたいと兄弟が言うと「青少年に殺生はさせ
られない」と答えているが、本心は別の処にあるんじゃないの?

私は畑に枇杷の木を3本植えて、半分はサルにやろうと思う。

2008.0708