桜で有名な奈良・吉野へ行く役目を仰せつかる。

吉野といえば『義経千本桜』か。タイムリーに朝、私にも佐藤忠信
が花矢倉に居てくれたことが分かり、嬉しくて泣いた。

それと、壮大な絵巻物を見るような感動が尾を引いた、初版で読ん
だ辻邦夫著の『西行花伝』が思い浮かぶ。内容は忘れたけれど。

これらの歴史と快晴の空に気分を盛り上げて、バスに乗り込んだ。


吉野の山は、下千本〜中千本〜上千本〜奥千本へと約3万本の桜が
1ヶ月かけて咲く。満開は上千本あたりだが、今日の人波とスケジ
ュールでは中千本まで歩くのが限度のようだ。

「桜だけを見るなら近所のそれで良い。酒を酌み交わして花を見る
処に意義がある」と云いながら、伯父たちは日本酒を飲み出した。

昼食後、伯母と金峯山寺や勝手神社まで人にもまれて歩く。爽やか
な風が通る和室でいただく吉野葛抹茶は、とても美味しかった。


帰路、道の駅での休憩を終えバスが動き出した途端、伯父が「参加
しなかった人の土産を買ったか?」と聞いてきた。

首を振ると、今回代表の私が買うものだと云う。初めての参加なん
だから、もっと早く教えてほしかったわ・・・。

やおら、伯父は自分の買った土産を取り出し「使うか?」と聞いた。

「もしかして、倍の値段で私に売る気!?」こういう知恵無くして、
駅前に貸しビルなど建てられるわけがないと瞬時に悟る。

伯父は笑って買値で(そう思いたい)渡してくれたが、気配りも出
来ぬようでは仕事も出来ないと反省する。


なぜか1本の山桜だけが脳裏に焼き付き、今、凛と咲ききっている。

2009.0412