寒気の中、一足早く春を感じたのは二村さんの通勤ファッション
った。ジャンパーとお揃いのような”NORTH FACE”のリュックは、
先月、性懲りもなくヴェトナムの市場で買ったらしい。

オリンピックのフィギアスケートの話題一色の頃、急に暖かくなり、
撮影に使った花々の香りが事務所に満ち出した。紅色の木瓜の蕾は
全部開いて枝が隠れるほどに、イチゴの実は次々と赤くなった。


そして今日は友だちに誘われてのフラワーアレンジメント。お仕着
せの花材ではなく自分で花を選べるところが嬉しい。

京都”そうげんカフェ”の小泉さんの座学で、最初に色の持つ要素
などを教えていただく。花の彩度や質感で無限に拡がるイメージ。

私は等色相差の組み合わせ(3色がすべて反対色)で素敵に活けたい
と思った。けれどいざ様々な花の前に立つと、自分の好きな花と色、
見たことのない珍しい花を手に取ってしまう。

幼い頃のきものの柄にあった薄いピンク色のポンポンダリア。アネ
モネは花びらの繊細さが好き。少しくすんだ白い薔薇は懐かしい。
草原の日射しを思い起こす鮮烈な黄色の花はどこの国から来たのか。

友だちのヨシエちゃんも決断が早いから、短時間で花と葉ものを束
ねて、二人で早々に席に戻る。先生から要点だけ聞けば、あとは手
の赴くままだ。お互い大満足の作品が出来て、自画自賛し合った。


暮れるにはまだ時間のある頃家に帰ると、離れの裏庭で蕗の薹を発
見した。あたりの4,5個を摘み取って、初めて”蕗味噌”を作る。

舌に若草のほろ苦さを味わいながら、『春を探して外に出ていたけ
れど、こんな近くにあった』という中国の漢詩そのままだと思った。

2010.0228