バレンタインデーの日、お昼から降り出した雪は、翌朝20cmの積雪
になった。そして四日目には雨が降り、夜中の雨は甘い匂いがした。

土山町の田村神社のお祭りは、例年2月17日から19日にある。甲賀
では『”田村さん”が終わらないと春は来ない』と云われている。
そして例年通り、”田村さん”には必ず雪か雨が降る。


長女が幼いころ大病したのと、祖父の具合が悪くなったのが”田村
さん”の時だったせいで、以来祖母はこの時期を極端に嫌う。

事務所のシノちゃんが「厄払いに行く」と言うので、厄落としで有
名な神社だと今頃知った。今年は最終日が休日と重なっているので
何年か振りに行くことにした。良い天気だから人出が多そうだ。

案の定、ひどく渋滞していたので夕方出直すことに。呆れた次男が
近道を教えてくれる。地元は私が先輩なのにうっかりしたものだ。


鬱蒼とした神社の杜は夏でもひんやりするぐらいだから、冬は尚の
こと、しんとした冷気に満ちている。

節分で家に放った豆を納めに行く神社と教えられていたが、そのよ
うな行事をしない人のためか、袋に入った豆(厄年の年齢の数)が
売られていた。一昔前にはなかった気がする。

参道には、昭和の遺産のような「飴のクジ引き」「ショウガ糖」
「瓢箪のお守り」「干し芋」「辛子」などを売る店があった。郷愁
は感じるけれど、この先若い人に人気が出るとはとても思えない。

最終日の夕方だ、庭木売りの声につられて白い木蓮を探してもらう。

あいにく黄と赤色しか残ってなかった。小さな白い花が山にぽつぽ
つと見える景色に、いち早く春を感じる。その白い辛夷を1本買う。

2011.0219