台湾を一周する旅を予約したのは五月の連休のことで、仕事
に追われるうちに、突然旅行当日を迎えた感じになった。

出発前から台風が懸念されたが、気に留めなかったのは晴れ
た場面しか想像できなかったからだ。台風一過で木々は折れ
たり薙ぎ倒されてはいたが、涼しくて良い天候に恵まれた。

変更は、土砂崩れのため高雄から花蓮までの行程がバスから
電車になったくらいだ。3000m級の山が連なる中央山脈を、約
5時間半かけて半周する。海と山々の車窓の眺めが眼に残る。

着けば広東料理が待つのに、車内販売の60元の駅弁をモリモ
リ食べる母78歳と娘29歳には驚いた。食欲=体力かもしれぬ。


「台湾の漢字は語源に基づいているから意味が分かるでしょ。
だが中国は文化革命以後、漢字まで変えてしまった。所縁も
ない字になった。」というガイドさんの話が印象的だ。

また『毛沢東vs蔣介石』などビデオが売られていたのも、意
外な気がした。けっこう大っぴらに批判するんだなと思った。


絶景に圧倒されたのは太魯閣渓谷だ。巨大な大理石の絶壁と
川。落石注意の看板にゾッとしたところで、運任せである。


故宮博物館は、娘と陶器のコーナーを見に行った。好みが似
てることを認識する。博物館の土産売り場にふたりともハマ
る。買い物カゴの中身が娘のそれと同じだったのには笑った。


『千と千尋の神隠し』の映画のモデルとして有名になった
九份は坂の町だ。見晴らしの良さと、テラスで飲んだコーヒ
ーの美味しさが相まって、台湾のイメージが美しく終わる。

2012.0828