「気がつくと僕は母(38歳・肉子ちゃん)だったし、娘(小学5年
生・キクりん)でもあった」「顔は笑みをたたえているのに、あと
から、あとからと、涙が頬を伝っていくのだ」

『漁港の肉子ちゃん』を読むきっかけは、蒼井ブルーの書評だった。
作者の西加奈子も蒼井ブルーも知らずにいたのだけれど。

最初は、キクりんと同じように肉子ちゃんの感性は合わない。こう
いう大人になりたくないと思うのだが、最後にはこんな思いを吹っ
飛ばす肉子ちゃんの圧倒的な個性で画面がいっぱいになる感じだ。


2/3を読んだところで、多賀大社への参拝の日を迎えた。同じ中学
を卒業した同年が皆で集まるのはこれが最後になるだろう。

食事会で、雷が落ちたT君ん家、水晶採りで行方不明になったY君、
消火器を倒して学校の廊下が泡だらけになった話などを聞くうちに、
キクりんとその友だちは、過去の我々なのだと気づく。

大人になる不安や、思春期の固い気持ちは誰もが経験してきた。ま
た「完全な大人はいないよ」とキクりんに諭すサッサン(漁港のオ
ジサン)の気持ちもわかる。本当だ、今、周りを見てそう思うもの。


帰宅後、最後まで読む。私はいつの間にか泣いていた。

肉子ちゃんのように、"あるがままに生きて人に愛される"のが本当
の生き方だ。見栄をはったり気負ったりすることが一切無く、自分
を全開にして生きられたら、どんなに生きやすいだろう。

読み終わっても、肉子ちゃんを想い出すだけで涙があふれる。「友
だちに肉子ちゃんがいればいいのにな」から、「私も肉子ちゃんに
なろう」とまで思うようになった。

2018.0228