誰にも言わずにいようと思っていたのに、つい話しかけてしまった。

「『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』観た?」と。
20歳のヒカル君とワカナちゃんが、調理の手を止めて顔をあげた。

「ハンカチじゃなくてバスタオルが要るってネットに書いてますね」
私はクルマにハンカチを忘れて、綿のストールで顔をぬぐったわ。

「Netflixでタダになるのを待ってます」とワカナちゃんは答えた。
いやいや、大画面で見て欲しいわ。オマケもくれるよ。

入場と同時に小さな冊子を手渡された。当日は感動で胸いっぱいだ
ったので翌朝読んだ。想像した場面や、映画を見終わった場面の続
きが小説になっていて感動の余韻が伸びる。大した仕掛けだ。

なのにワカナちゃんは、「私はそれ要らないですけど、4種類あっ
て集める人もいます。メルカリでプレミアが付いています」と言う。

一瞬4冊集めて読みたいと思ったのに、メルカリで確認すると、私
のもらった冊子に2200円の値段が付いていた。チケット代とドリン
ク代の元が取れるじゃないの。

一滴一滴雨が地面に落ちる様子や、月明かりが反射する海の中とか、
画像がすごくて驚いたと言うと、「それが京都アニメーションの特
徴です」とワカナちゃんは自慢げだ。


感動したし画像も素晴らしい。しかし、私は気になる点があった。

文学的素養を持つ友だち二人にLINEをする。すると、二人とも東京
在住のせいか「まず、映画館に行かないようにしている」とあって、
新型コロナに対する滋賀県との温度差を感じた。

早速一人が私の感想に応えてくれて、とても満足している。

2020.1008