緊急事態宣言で公共施設が閉鎖され、稽古事の教室は減っている。

だが、由貴ちゃん先生の気功教室の寺庄教室だけは開かれる。百畳
のホールに生徒は9名だから問題ないのだ。寺庄教室は70歳代の女
性ばかりで、私はオマケで入れてもらっている感じ。

少しハードな姿勢になると「あいたたたた」と口にするMさんは皆
の代弁者でもある。身体のあちこちに不都合が生じると、動作を緩
慢にしたり休むなりして、自分の体調に合わせる方が多い。

大津教室に、花形の生徒・101歳の綾子さんがいる。髪はグレーで
ふさふさ、お顔は白くて姿勢が良い。毎日化粧は欠かさない。80歳
からスペイン語を始める超前向きな性格。去年、100歳のお祝いで
100本の深紅の薔薇を抱えた姿はお似合いだった。

今年の初めには新型コロナに罹り中等症にまでなったにも関わらず、
入院中も気功をされていた。主治医が驚く回復力で退院。新聞に載
った。そしてこの秋は、美容雑誌『美ST』10月号に掲載された。

由貴ちゃんが雑誌を持ってきたので、皆で回し読みした。

目を引いたのは綾子さんの両脇に立つ73歳と76歳の娘さんだ。プー
ルサイドで三人とも水着、左の方はビキニである。「すごいなぁ」

『毎年、ここで水着の写真を撮っています』と小見出しにあった。
日々の美意識の積み重ねの賜物がビキニなんだろう。

綾子さんの娘さんと同世代の皆んなは無口になった。

いつも「綾子さんを見習って元気で綺麗でいてほしい」と励ます由
貴ちゃんの気持ちは分るけど、「なかなかそうはいかねぇわ」とい
う皆の気持ちも窺い知れる。雑誌は静かに閉じられた。

2021.0928