ひょんなことからマニュアル付きオートマティック車を運転する。

最近のクルマを知らなかったので戸惑う。ペダルを踏まずにハンド
ルの『+』『ー』で加速減速だなんて、30歳から20年間マニュアル
車に乗っていた私にすれば、中途半端なクルマという印象を持った。


二月は休みで、今月再開の茶道の稽古は、Sさんから譲り受けた枝
炭を使っての初炭点前。Sさんは高齢になられて、もう一緒に稽古
をすることは叶わない。先生も月末に白内障の手術を受けられる。

いつでも教室があると思っていたのは間違いで、これからは優先し
ていきたい。妹のクルマで行く稽古日、ギアレバーの横の数字に気
付く
。案の定、使った事はないらしい。多機能なものでも必要最低
限しか使わない人がいるのは、クルマに限ったことではないだろう。


パン職人ミッチの要望で、一緒にランチをとる。

席に着くなり、二カ月かけて研究を重ねた"ヌスボイゲル"という
オーストリアのパン菓子の説明を始めた。日本どころか海外でも詳
しく書いた本は見当たらないので試行錯誤したと話す。

「最初、ケーキに焼いてから、それをクラッシュするのよ」という
時点で、なぜ?!が消えない私はあとの手順が頭に入ってこない。

とにかくその大層なパンを、今週末、遂に店に並べるらしい。

それからミッチは、戦争が始まったので輸入が滞ると予想し、フラ
ンス・ドイツ・カナダの小麦粉を、カルフォルニアからは有機レー
ズンを、いつもよりかなり多めに発注済みだと胸を張る。

原材料を厳選した美味しい天然酵母のパンを買える私は僥倖と言わ
ねばならぬ、という気持ちになった。ミッチは、営業も優秀である。

2022.0318