「京都の美術館に、岸田劉生を見に行こう」と、主人から熱心に誘
われていた。会期は長いと思っていたけれど、あと数日で終わると
気付いた。雨の降る休日の午後、京都国立近代美術館へ行く。

チケットを購入してから、館内の"cafe de 505"でパスタを食べる。

注文の後、店の方が主人に「あ!今、帽子と眼鏡を着用の方には飲
み物のサービスがあります」と、岸田劉生の自画像のパンフレット
を指して言われた。それなら、私もおかっぱにして来ればよかった。


主人は解説を読みながら、「パリには行ってなかったかぁ」と呟く。

「大きな魚を何人かで担いでいる絵は誰?」と聞くので、青木繁・
海の幸と答える。「じゃあパリに住んだ画家は?」藤田嗣治しか、
私は知らないけど・・。そうかぁ勘違いしてたかな。

小さい頃、麗子像が滋賀銀行の一年用カレンダーに載っていたのが
少し怖くて強烈な印象だと主人は言う。それは、私も覚えている。

油彩と日本画にしばし佇んだ絵があって、来てよかったと思った。
驚いたのは、山本夏彦か鶴見俊輔の本に出てくる"岸田吟香"の息
子だったことだ。多才な親だから、子もさもありなん、て気がした。


「濃い線で構成されているビュッフェに似た絵は誰かなぁ」それを
言うならビュフェです。「パリのカフェの街角の絵が好きなんだ」
佐伯祐三かな、画像検索してみる?・・どうやら辿り着いたようだ。

「美術館はいつか行ったきりだね、あれはオルフェーブルだったか
?」それはフェルメールと思うよ。「馬と一緒になるって、これが
老いというものか。最近、ちっとも名前が覚えられないんだ」

いいえ、心配しなくて大丈夫。若い頃からほとんどこんな感じです。

2022.0308