六月に茶会が催されるため、二週連続、高槻の先生宅へ通っている。

先週は抹茶碗の藤花と蕨の絵柄を好ましく思ったし、袷でも耐えら
れたが、今日は夏大島でも暑く、その絵柄は興覚めに感じる。


点前は薄茶のみ。基本の基ながら、久しぶりに点てると、クセなり
アラなり出るのが常だ。身についたそれらを削ぐことに励む。私は
茶勺を取るとき、右手の指が茶杓より左に出ないよう気をつけたい。


先生が床花の相談をされる。先週は黒蝋梅・白の紫蘭・紫の先代萩。
今日は京鹿子・白の柏葉紫陽花が活けてある。これらは、来月には
無いだろう。茶花の冊子を繰りつつ、皆が思いつく花を口にする。

「野生の笹百合があれば・・」と先生はおっしゃる。丁度、蕾が見
つかればいいけれど。山の中に住む山田さんが採取の適任かと思う。


その山田さんは『灰形』の練習をしている。客は、床の拝見のあと
風炉と釜をご覧になる。清々しい灰形で迎えるため、重要な仕事だ。

柔らかでふわふわの灰を、匙の跡が残らないように形造るのは難し
い。山田さんは本に目を通してから嬉々として引き受け、道安風炉
や底土器・前瓦などを確認した。要は、炭が燃え続ければ良いのだ。

下火が入る部分に「水の卦」を描くらしい。風水なのか?八卦盆に
も描かれているね。燃える場所に消える水の呪いはヘンじゃない?
いや、火を治めるためだろうと山田さん。何につけ奥が深い。


障子に、庭木が影絵のように揺れ、上手なホーホケキョが聴こえた。

先生が「恵子さんのきものの為に、この月にしたのよ」と冗談を言
われるのは、私が毎年六月の稽古に紫陽花の付下げを着ていたから
だ。それでも、これに袖を通すのは数年ぶりになる。

2022.0528