三年ぶりの忘年会に参加する。会場は彦根城の近くで、午後八時か
らは二次会に誘われる。車で袋町に向かった。ここは遊郭の名残を
示す弁柄格子など、江戸時代からの建物が残る袋小路らしい。

現在は飲み屋街になっているが、閉ざされた懐石料理店や割烹店の
看板に昔の栄華が偲ばれた。二次会は"スナックせつ子"でカラオ
ケだった。70代のママ一人、8席のカウンター席のみの店。

全員が席に収まると間もなく、ギターを肩に募金箱を持つ二人の女
性が「フィリピンの地震で被災した人たちに援助を」と入って来た。
ママが「年末になると現われるのよ」と小声で言うが、「まだ11月
です」の私の声は、始まったクリスマスソングでかき消された。

だんだん歳末気分になる。次はフィリピンの歌だ。ナッツとウーロ
ン茶を口にして、フィリピンの夜ってこんな感じかなと想像する。

27歳が「キャンディーズは知らないです。ピンクレディは何人構成
ですか?」と言ったので、皆んな唖然とする。さっきの二人組は流
しだよと教えてあげればよかった。もう稀有な存在じゃないかしら。

美空ひばりと、演歌と唱歌。昭和ドラマに出演したような夜だった。


当社は12月1日で創業51年を迎え、週末の夕礼で記念式典があった。

私は同期のオハラ君と共に勤続30年の表彰対象だった。健康で働け
たのは有難いことだと思う。勤続15年が2名、20年が1名で、それぞ
れ記念品を贈呈してもらった。

しかし、要らないと言ったにもかかわらず、すでに刷り上がってい
た表彰状。夫の名前でもらう表彰状を、欲しい妻がいるかな。式に
は出ず電話番をしていたので、事務所で数人の拍手のなか受け取る。

2022.1208