イジス[Izis](1911-1980)写真展---パリに見た夢---は、とても
良かった。

パリやロンドンの、街と人々を撮った1940年〜1950年代の写真が、
最も好きだった。

セーヌ岸などの河岸で昼寝をする人たちは、どんな夢を見ているの
だろう。顔に中る光で、陽ざしの暖かさが伝わってくる。

絞った照明と重厚な木製の梁の見える処は、ホテルのバーなのか。
ソファの背に頬杖をついて眼を瞑っている”マルセル・エメ”は、
何をしていた人だろう。隣に座って話を聞いてみたい。


『地上の楽園』(1953)は、コレットとの共著だったのか。破壊さ
れた塔から見える枯れ木の雪景色。歩くのが不自由になった晩年の
コレットのために撮ったレッツの廃墟庭園は印象的だ。

コレットの部屋も心に残る。鏡台の前に整然と並ぶ香水瓶。数だけ
の想い出があったのかしら。蔵書に囲まれた居心地よさそうな部屋。

断捨離が日常語になって久しいけれど、この”物の多い部屋”は、
豊かな情緒に溢れている。加藤登紀子が断捨離を「必要なモノだけ
って、動物園の檻じゃあるまいし」と言ったことが頷ける。


すずらん売りの娘。トンネルの中のアコーディオン弾き。貴族のよ
うな顔付きのサーカスの小人。父親の肩に隠れながらサーカスを見
る少女。回転木馬に乗る老カップル。駅で待ち合わせた若い男女。

15区の中庭。猫が、二本のロープに干した洗濯ものの上に君臨して
いる。少年からミモザの花を買う、ささやかな幸せを感じる生活。

ひょっとしたら、私はこの時代を生きていたのかもしれない。

2012.0208