大津プリンスホテルの38階レストラン。
比良山の頂には雪が見えるが、ヨットの帆は白く映え、岸の桜は
満開だ。

前回 ここで食事をご一緒したのは、隣接する 京都大学・琵琶湖
環境質制御研究センターのM先生方だった。

琵琶湖は、北湖・中湖・南湖に分かれる。
600万年前、伊賀盆地に誕生した湖が、消えたり大きくなったりして、
現在の位置に、100万年前に 新たに誕生したという説が有力だ。

成長の盛りにある北湖は、深度を増しながら北上しているので、
(1年に3cm)湖北では沈降が始まり、湿地帯が多くできている。
反対に、消滅期の南湖は、数万年で堆積物に埋もれる運命にある。


その「南湖の粘土質を使って、信楽焼きを作ればいい。」
「溜まるものを使うのだから、タダじゃないか!?」と 先生は
おっしゃったのだった。

また、琵琶湖に注ぐ川は多く、出口は瀬田川だけ。それが、宇治川・
淀川と名前を変え、京阪神一帯の水道水になる。

道路側溝の濁水や 田の農薬から、ダイオキシンなどを取り除くには、
琵琶湖に入る以前の河川で 浄化すべきだとも言われた。

先生はおおむね、かかる費用には全く関心がないようだった。

琵琶湖を愛する人は多い。

湖面を見ながら、永く東京に住む 幼なじみの便りにあった、
彼女のお気に入りの句を思い出す。

     たっぷりと 真水を抱きて しづもれる

            昏き器を 近江と言へり (河野裕子)

2003.0408