今年の家の柿は3本共に、枝がしなるほど大きくて美味しい実を
たくさんつけた。近年に無い事なので、柿の好きな人にあげようと
したら「ウチも例年になく親戚から一箱ももらった」と言う。

周辺各町の友達によると”山の柿も豊富なので、この秋は猿が一匹
も里に現れない”というリサーチ結果だった。

子供たちが小さい頃、私は毎晩本読みを日課としていた。

作家いわむら かずおの『14ひきのやまいも』の中に、”むかご”
を運ぶ場景があった。「ムカゴって何?」「さぁ。実かな?」など
と、子育て熱心な割にはイイ加減な受け答えをしていたものだ。

去年の今頃、宇治から朝宮へ抜ける山道を走っていた時、一軒の
蜜柑や林檎や農産物を売る家の軒先に、”むかご”を発見した。

これだったのか・・。「山芋の孫みたいなもん」とお店の人は言っ
た。蔓の葉の脇に出る芽らしい。早速、子供達にメールで知らせる。
この本は覚えていても、”むかご”のことは誰も覚えていなかった。

専務は毎年秋になると、高校生の頃までよく食卓に上がった”松茸
の味噌汁”を恋しがる。外国産の松茸は香りも歯ごたえも無いと嘆
いて、ひとくさり昔の味を語るのでウルサクてしようがない。

昨日、『魚松』の大将が多羅尾産の松茸を駕籠に一杯くれた。夕飯
と朝食にかけて一人で3本は食べたので、来秋まで黙ることだろう。

信楽の今朝の気温は−0,1℃。今冬初めての氷点下になったとニュー
スは報じたが、山の動物は準備万端な冬ごもりだと思うと心は温か
い。本読みをせがむ子のいない今となれば、聞こえそうな気がする。

    音のして夜風のこぼす零余子かな(飯田蛇忽)

2005.1108