陶芸家・澤清嗣さんの窯に、建築家の高橋修一さんが来られる日。

高橋先生は知り合った当初、澤さんのファンだとおっしゃったので
驚いた。私たち夫婦は澤さんと30年来の付き合いがあったからだ。


午後、荒川豊蔵命名の『積翠窯』は、高橋先生の「住まい塾」の会
員の方々で賑わった。私の高校生の頃にオムツをあてていた息子の
克典君も、鈴木五郎さんの弟子時代を経て陶芸家になっている。

「克典君てカッコイイな」と澤さんに云うと、ライバル心からかプ
ロに撮ってもらった自分の若かりし頃の写真を出してきて自慢した。

近くにいた女性が「あらホント」などと褒めるものだから相好を崩
して
いるが、やはり男は、絶えず”今”で勝負して欲しい。


大壺を購入する方がいた。暫くして一回り小さい壺を所望する方が
いた。澤さんはさっきの六分の一の価格を云った。自分の作品だけ
に正確な評価だろう。だがこの場合、”あなたの選んだのはこの程
度”とも取れる。心なしか拍子抜けされたように見えた。

いかにも実直な澤さんらしいと思ったのに、次第に徳利も皿も同じ
価格を口にし出した。高橋先生も訝しげだ。澤さんはボソリと
「メンドクサクなってしまうねん・・・」とつぶやいた。


小田原市からいらした60歳代の上品な女性を、駅までお乗せする。

「高橋さんの設計する家は家具を選ぶ、又は排除する。特に所帯じ
みたモノを嫌う家ですね」と感想を述べると大笑いされた。「それ、
先生におっしゃったら?」「もう、会って2度目に云いました。」

実際に住む人の趣味や個性はどうなるのかとかねがね思っていたけ
れど、皆さんそれぞれ個性的で魅力ある方ばかりだった。

2007.0520