月に一度、茶道を習っている大阪の先生は、たった四名の生徒のた
めに甲賀まで来てくださっている。

午後1時に始まるから、当番はそれまでに用意するのが常識だろう
けれど、皆、準備に自信がないので先生に頼りがちになる。

当番は茶花も活ける。春浅い頃、初めて当番になった私は、花器を
明るい緑釉の杵型の信楽焼に決め、意気揚々と庭に出た。

雑木の多い庭は何でもありそうだが、小さなコデマリ以外目ぼしい
花が無い。ようよう選んで活けると、葉が多いとおしゃべりに見え
た。水盤や花器とは勝手が違って難しい。

結局、先生にお願いして茶室傍の山で見繕って活けていただいた。
2,3種類あっても、葉の数は全部合わせて奇数にするらしい。

今までお床の花を見ているようで、何も見ていなかった。


六月の稽古の日。まだ堅い蕾のホタルブクロ、咲きかけのアザミの
花、青いアジサイが飴色の竹篭に入り、ピタリと決まっていた。

そこだけ、野山を駆ける風が吹いているように見えた。

私なら何を入れよう。竹製の筒型花器ではありきたりだ。堅田の漁
師が使い込んだ笊があるわけではないけれど、何か相応しい道具は
ないかとあれこれ考えるのが愉しい。


金剛輪寺の沙羅の木(夏ツバキ)は、楚々とした真っ白な花をつけ
ていた。苔むした根占の緑に落ちた一輪も美しく、且つ涼しげだ。

空を仰げば透き通る楓の葉。池には睡蓮、水辺にはギボウシ・・。

自然の草花を、今、目覚めたように新鮮に感じる。永く習っていて
も、一つのきっかけでまた新に学ぶ眼になった。

2011.0630