十代から華道を習ってきたし、ここ20年以上は家に花を届けてもら
っている。毎週活けるだけでも相当な花の種類を見ていると思って
いたが、茶花に親しむようになって自分の知識不足を恥じている。

とにかく、野山の花の名前をほとんど知らないのだ。その点、茶道
の稽古仲間の庄司さんはよくご存知の上、育ててもいらっしゃる。


夏の終わり、七事式の『廻り花之式』という稽古のために各自が花
を持ち寄ったとき、さすが庄司さんは、秋海棠・ヨメナ・芙蓉・ム
クゲ・ミズヒキ、他に見たことのない花の数々を持って来られた。

「これは何という花?」

花の中心は薄紫で白い花弁は「レンゲショウマ」、朱色の小さなラ
ッパ状の花は「ツキヌキニンドウ」 と次々答えられた時には、クイ
ズ大会で何も答えられずに完敗しているような気がした。


一本一本種類の違う花が花台に盛られて運ばれる。四人が順番に床
の間の前に座り、花を入れては次の人が抜き、また入れる。花を手
に取って花づもり(長短をつけるなど)をし、サッと活けるのだ。

利休七則の『花は野にあるように』は聞き慣れた言葉だけれど、
「最も難しいのは、自らを巧む心、邪心が抜け切らないこと」とあ
っては、華道とは全く反対ではないか。

茶室に映るのは、野草の自然な色や形状だ。作られた花は主張しす
ぎる。例えばリンドウは、野生に比べると花数は多く色が濃い。


そういうわけで、最近の朝夕の通勤路が彩り豊かになった。

中秋の名月には必ず間に合うとされる尾花は多くなり、月見草は、
気温の下がった今頃にふさわしい、柔らかな黄色の花を付けている。

2014.0914