先週の三ヶ月ぶりのお茶の稽古は『中置』だった。『中置』が10月
だけの点前とされるのは、少し肌寒くなった頃に、風炉を客寄りに
近づけて暖かさを提供するためだ。


今週は奥稽古。紬のきものを着て、妹のクルマの助手席に座る。

妹とは年が離れているので、幼い頃は一緒に遊んだ記憶はあまりな
いけれど、こうして年を取って習い事をしていると、ままごと遊び
の続きのような気分になる。

久しぶりの濃茶を、桔梗を模った主菓子と共にいただく。

ザワついて広がりがちだった気持ちが一点に集約され徐々に澄んで
いく。これだけで稽古の価値は充分と思うけれど、そうはいかない。


湯の沸く釜鳴だけが聞こえる時、どうしてか数羽のカラスが強く啼
く。何かあるのではと窓に寄ったが、庭には秋明菊や酔芙蓉の花が
咲き、近所の洗濯物は陽射しを受ける長閑な風情があるだけだった。

ほどなく声は止んで昼食時間。控室に来年の干支の『寅』をデザイ
ンした茶碗や道具のパンフレットがあり、"五黄の寅年生まれの女
性は強い"の話題になった。妹は来年還暦、すると妹も五黄の寅か。

「次は大阪万博やね。カジノも出来るよ。行くでしょ?」とTさん
がおっしゃった。「行かへん」「なんで!」「えっ?なんで行くの
?」「面白そうやん」。Tさんは積極的な生き方なんだなと思う。


食後『大円の草』の稽古をする。真塗の盆に、それぞれ違う濃茶を
入れた唐物茶入と和物茶入を置く。銘柄は「喜久昔」と「松柏」。

風炉の点前をようよう覚えても今月でお終い。風炉の期間の稽古が
ほとんど休みだったせいか、今年一年があっけなく過ぎたと感じる。

2021.1028