食器を仕入れにK商店へ行くと、社長兼陶芸家のYさんが事務所か
ら顔を出し「コーヒー飲んでいかへんか」と誘ってくれた。

「まず、ケータイでリーザと入力してみ」とスペルを見せられる。
現れたのは、欧米の某大富豪の奥様の画像だった。アジアかインド
系の混じる美人。「彼女が自家用ジェットで関空まで来て」へ~。

「ボクの作品を気に入ったから、個展をさせてほしいと」空港から
はハイヤーで?「イヤ、日本の傘下の企業がクルマで連れてくるん
や」直接信楽に?しかも、この狭くて古びた事務所に?個展は壺?

「そうや、ブルックリン美術館で個展をしたときは、ボクのマネし
て全米中に穴窯が出来てん」「僕、米国は入国フリーパスやしな」
すごいなぁ。作品がモノを言うってこと?

「バスキア知ってるか?生まれた家がレストランになってる。店の
食器はボクの作や」オブジェだけでなく食器も手がけてるの?

「信楽の人間は誰も知らんけどな」。日本でも知らん人ばかりと思
うよ。「ところがボクの食器で店を出したいて、若いコックが東京
から来るねん」。確かに、ラスター釉薬の良い食器が机の上にある。

「その彼の店、今年の秋にミシュラン3ツ星で掲載されるらしい」。
へ~。「帝国ホテルのかき氷はな、こうして出し方の提案までして
あげてるんや」と、小鉢の下に鏡のような盤を置いて見せてくれた。

「若手作家にもアドバイスしてるんやで」えーっ?いつも仕入れて
食器はYさんの手にかかっていたのか。

ますます滑舌悪く、ますます痩身。なのに作品は洒落ていて風格が
ある。『Yasuhiro Kohara』の不思議。

2022.0428