鈴鹿市よりお越しのお客様から「ランチのあと野点をしたいので、
持参したポットに湯をいただきたい」との申し出があった。

桜が咲き始めたというのに、朝はマイナス4℃で雪が降ったが、午
後は温度も上がり風もなく暖かく晴れ渡った。

4人の女性は、池側の駐車場の隅に円座を組まれていた。私も裏千
家を習っていると言うと、「どうぞどうぞ」とお誘いくださった。

3つとも別の地名の万古焼の茶碗。菓子は両口屋是清の『桜づくし』
と紅梅屋の『ゆめ桜』。本格的だなと思うと同時に、ご用意された
ちょうどの人数分から分けてもらうのが申し訳ない気持になる。

奥伝点前では膝の辺りが肌蹴やすくなるため「きものは前幅を拡げ
て仕立てる」と皆がおっしゃったので、教授クラスと推察した。


とても美味しい抹茶だ!銘柄は小山園の『和光』とのこと。あまり
に美味しいので「工場長も呼んでいいですか?」と聞いてしまった。

1人増えたら2人も同じだ。工場長も習っていたから喜ぶだろう。

工場長を交えて、ミホ・ミュージアムで開催中の展示会・曜変天目
茶碗
の話題になる。元信楽窯業試験場の場長で、今は亡き高井隆三
さんは天目研究の第一人者だった。沢山の教え子がいる。

「天目研究を続けたら、身代が飛ぶと云われています」と工場長が
言うと、お一方が「でも、中国のおばさんは簡単そうに曜変天目の
偽茶碗を作っているのをテレビで見たわよ」とお話しになった。

天目模様だけでは芸術品にはならないけれど、偽物というジャンル
でなく、その中国のおばさんの技術は高く評価されるべきと思う。
志半ばで諦めた作家は死屍累々なのだから。

2019.0408